どうも、ぽいふるです。
前回は久しぶりにユニクロに関するビジネス記事を書いてみました。早速多くの方にご覧いただいて嬉しいです。
最近ファッション業界関連の記事が多くなってきたなー。(ほとんどユニクロだけど)それはそれでいっか。
ZARAの創業者アマンシオ・オルテガ氏が世界一の大富豪に
ということで、今日もfeedlyちゃんでネット散策をしていると、こんな記事を見つけました。
世界最大のブランド「ZARA(ザラ)」など複数のブランドを展開するアパレルメーカー、INDITEX(インディテックス)の創業者、アマンシオ・オルテガ氏が、ついにビル・ゲイツを抜き、世界長者番付第1位になったことが報じられました。
と言っても、株価の変動など時価によって資産が変動するため、1位だったのは23日の数時間だけだったらしいですが、世界一の大富豪となった時の資産総額は798億ドル(日本円で約9兆6,500億円)を記録し、ビル・ゲイツの781億ドル(約9兆4,500億円)を上回りました。
もはや国家予算みたいな金額ですね。
そしてこの記事の中で、特に気になった点があります。
それは、「アマンシオ・オルテガ氏は、インディテックス株式の59.3%を保有している」ということです。
創業者がインディテックス株式の過半数以上を保有
59.3%。
この株式の持ち株比率には驚いた。ゆうに過半数を超えてる。
しかも、その保有する株式は世界最大のアパレルメーカーであり、創業者といえどもこれだけの世界的な大企業でこれだけの株式を保有している人はなかなか少ないでしょう。(ビル・ゲイツも4%とかだし)
持ち株比率が過半数を超えているということは、ほぼ完全に決定権も手中にあり、投資家に対して気遣うことも少なく、経営に集中することができる環境にあるとも言えるでしょう。
実際、アパレルメーカーは自社株式の持ち株比率が高い創業者が多いようにも思います。例えば、ユニクロを展開する日本のファーストリテイリングにおいても、創業者の柳生正会長の持ち株比率は全発行済株式の21.67%であり、後継者候補である二人の息子たちの保有株式を合わせると、全体の30.69%を保有していることになる。
この株式保有数は、他者を圧倒しており、ファーストリテイリングの筆頭株主の座にある。詳しい持ち株比率は下記をご参照ください。
他の業界よりも創業者の持ち株比率が高い理由として考えられるのは、アパレルメーカー、特に製造から小売までを一貫して行うビジネスモデルに基づいているように思います。
一般的な製造会社などでは、まず材料を仕入れ、それを加工した上で販売します。
その際に販売したからといってすぐに現金が入ることは少なく、売掛金や手形という形でキャッシュが入るまでに数ヶ月かかることがよくあります。一方、仕入れた分の支払いはそれまでに行っていなければいけないこともしばしばで、常にキャッシュ不足に悩んでいる企業も多いです。さらに、材料を在庫としてある程度保有しておかないといけないケースも多いため、余計に支払いが増え、キャッシュに悩まされることになります。
これを会計用語でいうと、「売上債権回転期間が仕入債務回転期間より長く、さらに在庫回転期間が計上されるため、運転資金が必要となる」となります。(この辺りの用語について紹介する記事も書いてみたいな)つまり、端的に言えば、キャッシュ(現金)が必要になるっていうわけです。
この運転資金、事業を拡大していこうと思えば、どんどんその金額は増加し、拡大のためにはさらなる現金が必要となり、経営者は銀行からの融資やベンチャーキャピタルからの投資などで資金を調達します。
中でもベンチャーキャピタル(VC)から調達をすると、銀行とは異なり資金を返済する必要はありませんが、その分、会社の株式を発行し、ある一定の比率をVCに渡すことになります。そうすれば、他者が株式を保有していくにつれ、徐々に創業者の保有比率は低下していくことになります。
そのため、上場した企業の創業社長でも、株式保有率が少ない方もいらっしゃったりするんです。一見、銀行融資に比べ、金利も発生せず、資金を返済する必要もない投資は、非常にメリットが強いと見えますが、これは第三者に経営の支配権を握られる可能性もあり、大きなリスクを合わせもつ諸刃の剣のようなものとも言えるでしょう。
驚異的な持ち株比率を維持できた理由を考えてみる
一方、ZARAやファストリテーリングの創業者が多くの持ち株比率を保てている理由として、彼らの企業のビジネスモデルに二つの理由があると思います。
1.入金サイトが短く、支払サイトが長いため、手元キャッシュが多い
どいうことかというと、小売業といえば、お客さんは個人客がメインで、販売に対する売上の現金は、販売と同時にその場で手渡しなどで入金されます。(クレジットカードの場合は、信販会社を通して期間が置いてから入金されますが)
それに対し、材料などの仕入れの支払いは、月末締めの翌月払いや翌々月もしくはそれ以上などと仕入債務の支払いサイトが長く、常に現金を多く保有しておける状態を作ることが可能です。その手元資金を元に、広告戦略や営業戦略を展開し、さらに売上拡大を進めることも可能となります。
2.利益率の高い商材
さらに、彼らが取り扱う商品は、自社で製造から販売までを行うため、原価を最大限削減し、非常に粗利が高く、利益率が良いものとなります。そのため、売上が伸びるほどに、潤沢な利益が蓄積され、さらに手元キャッシュが増えるという構造となっています。
つまり、以上のような理由から、手元資金を潤沢に保有していることにより、ベンチャーキャピタルなど第三者に依存せずとも、自社にて拡大成長のための資金を準備することができたということが、株式を手放さずに成長できた一つの理由として考えられると思います。
柳生社長の著書『一勝九敗』を読むと、ユニクロの急速な出店のために、銀行融資もかなり行い、柳生氏が保証人として債務を背負ったこともあり、非常に苦労されたことも述べられていますので、もちろん一概にビジネスモデルだけでこの保有率を確保されているというわけではないでしょう。
しかし、株式の保有率を長期的に高く維持するためには、その基盤となるビジネスモデルの構造が非常に重要となり、それは初期の段階からしっかりと築いていかないといけないものだということを改めて実感しました。
ZARAとユニクロのビジネスモデルの比較についても本が出てるので、それを読んでみるのも勉強になりそうですね。
ではっ!
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