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歴史学者「磯田道史」氏のおすすめ著書をランキング形式で紹介する

今回は、映画『武士の家計簿』や『殿、利息でござる!』の原作者である、歴史学者・磯田道史氏の著書の中で、おすすめしたい本について書こうと思います。

歴史学者・磯田道史氏とは?

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thepage.jp

磯田さんは、日本の歴史学者であり、様々な大学や研究機関にて准教授や教授職を歴任されてきた研究者です。

これまでに多くの歴史関連の本を執筆されていて、一般教養書的なものからエッセイ集まで様々。近年は著書が映画化され、原作となった本もベストセラーになっています。

 

また、メディアでも活躍されており、中でも僕が大好きな歴史番組『英雄たちの選択』にも出演されています。

歴史を動かした偉人が、人生を変える選択をした葛藤の一場面を毎回取り上げ、様々な分野の専門家たちが互いに自分の見解を主張し合う番組です。

 

磯田さんはその番組の司会進行役を務められており、毎回専門家たちの意見が出尽くした後に述べる”まとめ”的な見解を述べられるんですが、その内容が毎度素晴らしい。

歴史の一事象を端的に結論づけるのではなく、それが他の事象へどのように波及したか、日本史に対し、その事象がどのような影響を与え、現代にどのように結びつくのか、というような多角的及び大局的な視点を学ぶことができます。

 

最近は「歴史」というフィールドを超えて、報道番組などでコメンテーターとしてもご活躍されてますが、僕としては、やはりこの番組の司会進行役として語られるお話が一番好きです。

 

この番組については、過去の記事で書いたので、良ければそちらもご覧ください。

majicpie.hatenablog.com

 

磯田道史氏のおすすめ著書をランキング形式で紹介する 

では、個人的におすすめしたい磯田道史氏の本を書きたいと思います。

ランキング形式にしてますが、個人的な感想と簡単な本の内容も書いてます。

6位 日本人の叡智

日本人の叡智 (新潮新書)

日本人の叡智 (新潮新書)

朝日新聞で連載されていたコラムを元にした作品で、日本史500年にわたる98人の珠玉の名言を選りすぐって集めた名言集。その名言の背景にある彼らの生き様を、徹底的な調査を元に語ったエッセイ集でもあります。

この名言集の特長として、一般の名言集と異なり、教科書にも載っているような著名な歴史上の偉人だけではなく、むしろ一般的には知られていないような"隠れ偉人"を取り上げ、彼らの生き方・在り方、そしてそこから導き出された名言が集められています。

 

他のエッセイ集とは異なり、新聞コラムだったため、1つの記事に700文字という短い文章で、端的にまとめられています。その分気軽に読むことができます。
 

5位 殿様の通信簿

殿様の通信簿 (新潮文庫)

殿様の通信簿 (新潮文庫)

歴史上高名な大名は数多くいますが、多くの場合、彼らの行った政策や改革にのみ注目が集まり、本来の性格や行いについて語られることは少ないように思います。

 

そんな中にあって、幕末の要人が秘密裏に作成したと考えられている『土芥寇讎記(どかいこうしゆき)』 という大名の暴露本とも言える史料があります。日本全国の243人の大名について、一般には知られていない大名たちの素行が赤裸々に評価されているとのこと。

 

その史料を元に書かれたものが、この『武士の通信簿』であり、大名の人柄を垣間見ることができる歴史エッセイ集です。

ちなみに、『武士の通信簿』を書いた背景について、別著『江戸の備忘録』の一節で語られています。

4位 江戸の備忘録

江戸の備忘録 (文春文庫)

江戸の備忘録 (文春文庫)

織田信長や豊臣秀吉、徳川家康、西郷隆盛など、誰もが知る偉人の話も面白いですが、江戸時代の文化や風習、教育事情など、教科書では知ることができないような、日本の国家や江戸の諸藩の構造についてわかりやすくまとめられた随筆エッセイ集です。

 

面白かったものの一つに「日本人の名前」の由来について書かれたエッセイがあります。

昔の「日本人の名前」には、「衛門」や「兵衛」という名をよく見かけますが、それは衛門や兵衛が元来は朝廷の衛士を示す官名であり、それを民間でも勝手に乗り始め、いつの間にか私的利用が定着したらしいです。

 

こういうトリビア的な知識も仕入れることができるので、歴史に詳しくない方でも楽しく読めると思います。

他にも「拍手は教育のはじまり」や「江戸時代の左利き」なども勉強になりました。

 

タイトルは「江戸の」と銘打っていますが、江戸時代以外にも安土・桃山時代の戦国武将、明治維新後の偉人や文化についても触れられています。

3位 司馬遼太郎スペシャル(100分 de 名著)

司馬遼太郎スペシャル 2016年3月 (100分 de 名著)

司馬遼太郎スペシャル 2016年3月 (100分 de 名著)

個人的に、ぜひぜひ読んでいただきたい本。特に司馬遼太郎ファンの方は必見の一冊だと思います。 

司馬遼太郎の作品を丁寧に分析し、司馬さんが現代を生きる我々に何を伝えたかったのか、そして「司馬史観」と呼ばれる司馬作品の観点はどのような背景から生成され、他の著者とはどのように異なるのか、磯田氏の鋭い分析力がここでも発揮されています。

 

磯田氏が本著の一節で、このような文があります。

歴史というのは、強い浸透力を持つ文章と内容で書かれると、読んだ人間を動かし、次の時代の歴史に影響を及ぼします。それをできる人が「歴史を作る歴史家」なのです。

過去を探究する歴史家が、実は未来の歴史を作ることができる。この言葉には、非常に感銘を受けました。

これは、一般の人を含めて歴史を調べることの意義なのかもしれませんね。

 

2位 武士の家計簿「加賀藩御算用者」の幕末維新

武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 (新潮新書)

武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 (新潮新書)

2010年に堺雅人主演で映画化され、磯田道史さんの名が一般にも認知されるようになった著書。

 

本が出版されたのは2003年で、内容も映画のようなストーリー仕立てではなく、ある武士が残した家計簿から磯田氏が幕末当時の状況を推測しながら語っていくドキュメンタリー形式の本です。磯田氏もまさかこの作品が映画化されるとは夢にも思わなかったようで、映画化の依頼を受けた当時の驚きを別著のエッセイでも述べています。

 

この作品を読みながら、磯田氏の状況推理力とデータ解析力に驚嘆した。

加賀藩で代々御算用者(藩の会計係)を務めた猪山家の4代37年にわたる膨大な出納帳を丁寧に調べ上げ、支出と収入の数字、そして勘定科目という2つの情報から、猪山家の家計状況、そして家庭環境を再現し、さらに猪山家という一つの"一般の下級武士家庭モデル"から、江戸時代当時の一般武士家庭の生活環境を帰納的に導き出していく展開は、読んでいてどんどん引き込まれました。

 

さらに、幕末の激動の中で、加賀藩の藩士である猪山成之が、新政府の軍事司令官・大村益次郎に見出され、海軍主計として出世していく経緯が本著の後半部分で描かれいる部分も非常に興味深いです。

 

一般教養書的な本なので、若干とっつきづらく感じる方もいるかもしれませんが、是非読んでみていただきたい本です。

 

ちなみに、映画化された『武士の家計簿』は2016年現在、Amazon Primeで無料公開されています。興味があれば、こちらも観ても良いかと思います。

猪山家の人々の三代にわたる家庭を描いた作品で、時代映画ながら戦闘シーンがあるのではなく、ある家族模様が描かれたほのぼの観れる作品です。

武士の家計簿

武士の家計簿

 

 

1位 歴史の愉しみ方

歴史の愉しみ方 - 忍者・合戦・幕末史に学ぶ (中公新書)

歴史の愉しみ方 - 忍者・合戦・幕末史に学ぶ (中公新書)

個人的におすすめしたい著書第1位は、『歴史の愉しみ方』。

こちらも歴史エッセイになりますが、筆者がいつ古文書を愛すようになり、 どのようにしてミミズが這ったようなくずし字が読めるようになったのか、磯田氏の歴史に対する思い入れ、そして愛情とも言えるあくなき探究心の素源を垣間見ることができます。

 

古文書の魅力、そしてそこから発見される歴史の忘れられた遺産。古文書に対し、真摯に向き合うことで、今を生きる術、そして未来につながる道標を見つけ出すことができるように感じました。

僕が古文書を自分でも解読できるようになりたいと真剣に考えるようになったのが、この本を読んでからです。磯田氏の歴史への愛を感じることができ、歴史好きの方はさらに歴史を知ることが好きになれる、必見の本だと思います。

 

この著書の説明については、最後に本著の紹介文を記載しましょう。

忍者の子孫を訪ね歩き、東海道新幹線の車窓から関ヶ原合戦を追体験する方法を編み出し、龍馬暗殺の黒幕を探る――。
著者は全国をめぐって埋もれた古文書を次々発掘。そこから「本物の歴史像」を描き出し、その魅力を伝えてくれる。同時に、歴史は厳しいものでもある。地震史研究にも取り組む著者は、公家の日記などから、現代社会への警鐘を鳴らす。
歴史を存分に愉しみ、現代に活かせる「歴史通」になりたいあなたへ。

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ちなみに、新幹線の車窓から関ヶ原の戦いを連想するという、筆者の習慣は微笑ましくもあり、自分でも早速やってみたいとも思いましたw

さいごに

今回は歴史学者・磯田道史さんのオススメ著書を紹介しました。

 

そもそも何で磯田氏について取り上げようと思ったかというと、単純に好きな作家さんだからという理由なんですけど、そもそも歴史学者というものに個人的にとても興味があるんですよ。

歴史学者のように、歴史の真実について深ぼっていく作業って、地道で根気がいる作業ながら、とても楽しそうだなと憧れがあるんですよね。

 

僕は歴史を調べるのが好きで、もともとは歴史小説とか読んでたんですけど、歴史小説はあくまで「小説」なんで、どうしてもフィクションが入ってしまいます。

例えば、僕も大好きな司馬遼太郎さんの作品でも、膨大な調査史料をもとに描かれてはいるものの、やはり主人公を美化したり、本来は出会っていない人が出会ったり、存在しない人物が描かれたりしています。

 

物語としては、それはそれで面白いんですけど、僕としては”史実”が知りたい。

何の着色もなく、良い面も悪い面もひっくるめて、素の人物を知りたいと思うわけです。そういう流れで、史伝文学系を読んだり、さらに明治初期に書かれた記録などを読んだりしています。

 

 

そんな中で、難しい古文書から興味深いお話を見つけ出し、一般人の僕にでもわかるような内容に嚙み砕き、丁寧に過去の真実を伝えてくれる磯田さんの著書は、僕にとってもシンプルに楽しい作品です。

 

今回は歴史系、特に文化面の要素が強い作品をメインに紹介しましたが、他にも興味深い著書が沢山ありますので、僕も引き続き読んでいきたいと思います。

 

 

ちなみに、ランキングには入れませんでしたが、2016年5月に映画化され、公開されたのが、『無私の日本人』です。

 

市井の中で生き、歴史に名は残っていないけれど、私利私慾ではなく、無私の心で自分たちが愛する町を救おうと取り組んだ日本人三人を描いた作品。

映画は観てないので何とも言えないですが、この本も傑作です。

 

無私の日本人 (文春文庫)

無私の日本人 (文春文庫)

 

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