Magic Pie

さて、羊に戻るとするか

村上世彰氏復活の背景「コーポレート・ガバナンス強化」について考察した

こんにちは、ぽいふるです。

先日書いた、村上ファンドの村上世彰氏と村上絢(あや)氏による、黒田電気への臨時株主総会招集及び社外取締役の選任請求の記事が結構アクセスいただいてます。(うれぴー!)

majicpie.hatenablog.com

 

Googleアナリティクスで、アクセス状況や検索キーワード等を確認しながら、多くの方が、村上世彰氏及び絢氏の出現に注目していることを実感しました。

 

村上世彰氏の動向に注目が集まっている

そして、今日もネット散歩していたら、またまたこんな記事を見つけました。

www.sankei.com

 

先日村上彩氏率いるC&Iホールディングスが、黒田電気株式会社に対し行った、村上世彰氏ら4名の社外取締役選任の提案を、黒田電気側が一蹴したとのこと。

 

村上勢は反発の意を示しており、8月28日に開催が決定した臨時株主総会に注目が集まっています。

 

キュレーションサービス「NewsPicks」でも、村上氏の投資活動活発化について、多くの経済著名人がコメントをあげてます。

f:id:majicpie:20150720020613j:plain

f:id:majicpie:20150720021237j:plain

newspicks.com/

 

賛否両論あるものの、比較的賛同の声が多いですね。

 

村上世彰氏の再起は「コーポレート・ガバナンス強化」が要因か

世彰氏個人及びC&Iホールディングスは、今回の黒田電気だけでなく、複数の企業株式の大量取得を進めており、株式市場を沸かせています。

 

ですが、そもそも、なぜ世彰氏はこのタイミングで、投資活動を再開したのでしょうか?

その理由として、現在政府主導で進められている、コーポレート・ガバナンスの強化が大きく関係していると考えられます。

 

そこで今回は、そのコーポレート・ガバナンスの強化の動きについて考えたいと思います。

 

コーポレート・ガバナンスとは

コーポレート・ガバナンスとは、企業統治とも言われ、長期的な企業価値の拡大の為に、株主や債権者などの利害関係者によって、企不正行為を防いだり、収益性を高めたりと、企業を統制し、経営陣を監視する仕組みのことを言います。

 

コーポレート・ガバナンスについては、コトバンクに記載されている、中央大学の高橋教授の説明が一番わかりやすいと思います。

株式会社にはCEO(最高経営責任者)を始めとする業務執行者と、株主を始めとするさまざまな利害関係者(ステークホルダー)がいる。いずれの立場にあるにせよ、会社が法令を遵守し、効率的に運営されることが求められる。そのように業務執行がなされるようにコントロールしたり、モニタリングしたりする仕組みなり体制がコーポレート・ガバナンスである。 要するに、株式会社では株主が実質的支配者で、その代理人が経営者である。この実質的支配者である株主や、従業員その他のステークホルダーの利害を反映した行動を代理人である経営者がとるように方向付けていくことであり、その仕組みである。

コーポレート・ガバナンスとは - コトバンク

 

具体的には、企業の情報開示を促したり、株主の代弁者となる社外取締役を置いたり、一人の経営者への権力集中を避けるために役職を分離したり…という取組みをすることを言います。

 

コーポレート・ガバナンスの概念は、1960年代にアメリカで誕生し、それ以降、イギリスやドイツ、フランスなどのヨーロッパ諸国にも広がり、1990年代以降に日本にも導入されました。

 

しかし、日本においては、コーポレート・ガバナンスの考え方は認識されているものの、実質的には企業経営に対して株主が積極的に介入できることはほとんどなく、株主側も株主総会で批判しながらも、結局経営陣の意向を通してしまっており、経営は経営陣に一任するという意識が一般常識となっていたんです。

 

「自分だけ出しゃばらない」という日本人の「協調」の文化が、ある意味、株主の積極的な発言や介入を阻害しているとも考えられますね。

 

そのような国内の企業統治の現状について、国内の経済学者や政治家は多くの疑問を投げかけていました。この記事がわかりやすくまとまっています。

www.nikkeibp.co.jp

 

国内で始まったコーポレート・ガバナンス強化の動き

そのような状況の中、内部監査が機能していない国内企業の現状を鑑み、昨年2014年6月、政府はついにコーポレート・ガバナンスの強化に乗り出しました。

thepage.jp

 

具体的な施策としては、企業に対して「コーポレート・ガバナンス・コード」を施行すること。

 

「コーポレート・ガバナンス・コード(企業統治原則)」とは、株主の権利や取締役会の責任、適切な情報開示など、上場企業が遵守すべき行動規範をまとめたものです。

金融庁と東京証券取引所が、2014年8月から12月にかけて原案を策定し、最終案として公表しました。

 

特徴として、上場していても実施するにはソースが不足している企業に配慮し、「コンプライ・オア・エクスプレイン」という手法がとられ、上場企業はコードの内容を実施するか、もしくは実施しない場合はその理由を説明することが求められます。

 

コーポレート・ガバナンス・コードについては、この記事が端的にわかりやすく書かれています。

www.sankei.com

 

このコードの中で特に重要なのは、東証1部及び2部の上場企業に対し、2名以上の社外取締役の設置を求めている点です。社外の人間を入れることで、外部の意見をより経営に反映でき、また、より客観的に経営者の評価を行うことが可能となると考えれています。

 

その「コーポレートガバナンス・コード」が先月6月1日から、ついに施行されました。

 

コーポレート・ガバナンス強化が、村上氏の追い風に

外部の意見を取り入れることで、より企業価値を高める。コーポレート・ガバナンスの強化は、村上ファンド時代以前からの村上世彰氏の一貫した主張でした。

 

しかし、2000年代前半、これまでの日本の常識では考えられなかった「もの言う」株主の登場に、株式市場は荒れ、敵対的買収の危機にさらされた企業は、より頑なに部外者の侵入を拒みました。

 

そんな状況下で苦戦を強いられ、結果的に崩壊した村上ファンドでしたが、現在のコーポレート・ガバナンスの強化の波は、村上氏にとって、強力な後押しとなっています。

 

そもそも今回、コードが導入された理由としても、産経ニュースによれば、

企業が資本を効率的に使っているかどうかを表す株主資本利益率(ROE)は、日本企業が約8%と米国(約17%)の半分以下だ。日本企業の経営者がリスクを恐れ、企業のM&A(合併・買収)や新規設備投資など攻めの経営を躊(ちゅう)躇(ちょ)したり、収益を株主への配当や従業員の賃上げに回さず、内部留保をため込んだりしていることが背景にある。政府はこうした企業の慎重姿勢を打開し、国際競争力を高めようと、今年6月の新成長戦略にコードの策定を盛り込んだ。

とのことで、要は、企業がリスクを恐れて貯めこんでいる内部留保を、有効活用し、より企業価値を高めることにあります。そして、その結果として、その企業に投資している株主も、より多くの配当や企業価値の拡大による投資資金の増加が図れるということです。

 

つまり、今回のC&Iホールディングスによる黒田電気への介入も、内部留保が多い割にうまく活用できていないことを目を付け、その改善の為に、社外取締役の選任を要求しているので、新たに導入されたコーポレート・ガバナンス・コードの意向にマッチしていると言えます。

 

さらに、政府主導でのコーポレート・ガバナンスの強化の宣伝により、投資家を含め、多くの日本人のガバナンスに対する注目が集まっているタイミングです。

村上氏は、その波にうまく乗り、活発な投資活動を再開したと考えれるでしょう。

 

日本の企業文化に合うコーポレート・ガバナンスを考えるべき

ただ、今回の性急なコード導入には、若干疑問もあります。

たとえば、東京証券取引所のサイトでは、コードの策定及び、上場制度の整備の為の参考として行った海外調査レポートが公開されています。

 

この調査では、 コーポレート・ガバナンス・コードの先駆けであるイギリスをはじめ、ドイツやフランス、シンガポール、アメリカの諸外国でのコード導入状況及び施行運営状況推移が調べられており、年々コードに則った経営を各企業が進めていることが示されています。そして、海外のコード内容を元に、今回の企業統治原則が策定されています。

 

しかし、問題は、ヨーロッパやアメリカ等の欧米諸国の企業と、日本の企業には、大きく文化的な相違があるということを、どこまで考慮出来ているかということです。

 

今回のコード原案策定には、あらゆる業界から有識者が集い、何回もの再考を行われているので、もちろんそういう配慮も含まれているとは思いますけど、一通り見ただけですが、日本文化における独自性はあまり取り込まれていないのではないかと思うんですよ。

 

欧米、特にアメリカでは、「個人主義」が一般化されており、積極的な自己主張がまかり通るでしょう。そして、それを言われる側(経営者側)も、それをややこしいと思いながらも、当然として受け入れられるのかもしれません。

 

しかし、上記でも書いたように、「和」の文化、協調を重んじる文化で育まれた日本人にとって、株主とは言え、いきなり知らない第三者が介入し、これまでの経営方針を覆していくことには、抵抗を感じる経営陣は多くいるでしょう。資本主義=株主至上主義とは言うものの、それを理性的に素直に受け入れられるものかどうか、難しいところだと思います。

 

だからと言って、僕は、コーポレート・ガバナンスの強化に対して否定するつもりはありません。グローバル化が進む中で、海外企業ともやり合っていく上では、新たな企業体質へと変化し、新たなものを取り入れていくことは大切だと思います。

 

ただ、今回は若干制度を急ぎすぎているように思うんです。

 

日経ビジネスの記事でも述べられていますが、会社法の改正には4年もかけたにもかかわらず、今回は1年程で策定から施行へと進みました。企業からしたら、まったく知らないうちに、新たな制度が出現したようなもので、「いきなり言われてもどうしようもねーわ」っていうのが正直なところでしょう。

 

海外とは異なる文化を持つ日本企業だからこそ、海外と同様の制度を入れるならば、日本風にアレンジを施すか、もしくは文化を染めるためにある程度ゆとりをもった時間が必要なのではないでしょうか。

 

それは、政府のコードだけではなく、村上氏の投資スタイルに対しても言えるかもしれません。今コードが施行されたとはいえ、まだ実質的には企業は何も変わっていない状況です。その中で、企業の経営陣にガバナンスに対する理解をもらうためには、一方的な交渉スタイルは、今の日本にはまだ少し早いのではないだろうかと思います。

 

今後、企業統治が進み、グローバル化した日本企業においては、「もの言う」株主は村上氏だけでなく、もっと増加するだろうし、社外取締役の存在も一般化するでしょう。しかし、それに向けたシフトを円滑に行うためには、変動期の今、政府及び実行者の経営層に対する適切なフォローが重要なのではないでしょうか。

 

以上、ではっ!

あとがき

ちなみに、コーポレート・ガバナンス・コードの内容について、詳しく知りたい方のために、下記におすすめの記事を載せておきますね。

コードの詳細についてわかりやすくまとめまってるのはこの記事。

business.nikkeibp.co.jp

コードの本文を読みたい方はこちら。

コーポレート・ガバナンス・コード

www.jpx.co.jp

 

コーポレートガバナンス・コードの実践

コーポレートガバナンス・コードの実践

  • 作者: 武井一浩,井口譲二,石坂修,北川哲雄,佐藤淑子,三瓶裕喜,武井一浩(編著)
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2015/04/23
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る