Magic Pie

follow the white rabbit...

ピースの又吉が受賞した「芥川賞」ってどんな賞か?選考方法もまとめてみた

こんにちは、ぽいふるです。

先日16日に、お笑いコンビ・ピースの又吉直樹さんが、第153回芥川賞を受賞されましたね。

www.huffingtonpost.jp

 

お笑い芸人初の快挙ということで、かなりメディアで取り上げられてます。その結果、受賞作の『火花』が、ついに120万部超えたとのこと。ほとんどの書店で完売状態らしい。(現時点でAmazonでも完売中)

www.sankei.com 

 

数ヶ月前、紀伊国屋書店をぶらぶらしてたら、又吉さんが『火花』の発売告知で店内アナウンスをしてました。アナウンスと言っても録音音声ですが、紀伊國屋書店って色んな作家さんに紀伊國屋書店用に告知音声を録ってもらってるらしく、作家さん本人が新発売した作品についてアナウンスされています。

 

で、普通は「私の今回の作品は~」みたいな感じで、作品の内容とか読みどころとかを紹介されるんですけど、又吉さんの場合、作品の紹介はほとんどなくて、日常会話のような会話で始まり、「僕の小説は読まなくてもいいんで、みなさん本読んでくださいね」というアナウンスで終わりました(笑)

 

店内アナウンスを聴きながら、作品のこと全然紹介してなくて大丈夫なのかと、心の中でツッコミを入れたことをふと思い出しましたが、まさか芥川賞を受賞するとは。

受賞、おめでとうございます。

 

ところで、芥川賞ってどんな賞で、どうやって決めてるんでしょうか?

よく「芥川賞受賞作品」とか「直木賞受賞作」とか聞きますけど、その選考方法とか決定方法ってあんまり知られてないんじゃないかと思います。

そこで、今回は芥川賞の選考方法について調べてみました。

 

そもそも「芥川賞」とは?

まず、「芥川賞」がどんな賞なのかについてご紹介します。

 

文藝春秋のサイト(文藝春秋|各賞紹介)によると、芥川賞の正式名称は「芥川龍之介賞」。大正時代の小説家・芥川龍之介の名を記念して、芥川の友人であり、文藝春秋社の創業者である、菊池寛氏によって昭和10年に創られた日本で最も長い歴史を持つ文化賞です。(ちなみに、直木賞も同時に制定された)

 

新人作家のみを対象としており、新聞や雑誌に発表された「純文学」作品の中から、最も優秀と認められた作品に与えられます。

※純文学・・・大衆小説に対して「娯楽性」よりも「芸術性」に重きを置いている小説(純文学 - Wikipedia

 

芥川賞の選考方法

芥川賞の授賞は年に2回あり、上半期(12~5月)と下半期(6~11月)に分かれています。選考は、文藝春秋社内の「日本文学振興会」という団体によって行われ、授賞作家には正賞として懐中時計、副賞として100万円が寄与されるとのこと。

芥川賞って賞品と賞金ももらえるんですね。正賞の懐中時計は、賞制定初期からずっとプレゼントされているらしいです。今の時代、懐中時計って実用的ではないですけど、情緒があっていいですね。

 

選考手順

芥川賞の具体的な選考過程についてですが、この記事が参考になりました。

www9.nhk.or.jp

 

まず、同人誌も含め、幅広い雑誌に掲載された作品の中から80作品程度を選び、文藝春秋の編集者20人で作る「予備選考委員会」にて、分担して作品を読み込み、候補作を5作品ほどに絞り込むそうです。

 

この段階で、もうかなり厳選してるんですね。最初に数百以上ある作品の中から、作品を厳選していく作業って、全部読んでるのかな。おそらく担当者で雑誌別とかで分担して、候補作品を読んで挙げてるんでしょうね。

 

そして、最終候補作が発表された後、選考委員によって評価を行い、受賞作を決定します。選考委員は以下の著名な作家9名。7名が芥川賞の受賞歴があり、全員が賞の候補に挙げられた経験をお持ちです。

 

選考委員
  • 小川洋子・・・1991年に『妊娠カレンダー』で第104回芥川賞受賞。『博士の愛した数式』がベストセラーとなり、映画化もされましたね。
  • 奥泉光・・・1993年に『石の来歴』で第110回芥川賞受賞。
  • 川上弘美・・・1996年に第115回芥川賞受賞。
  • 島田雅彦・・・6度芥川賞候補に選ばれる。1984年に第6回野間文芸新人賞受賞。
  • 高樹のぶ子・・・1983年に『光抱く友よ』で第90回芥川賞受賞。
  • 堀江敏幸・・・2001年に『熊の敷石』で第124回芥川賞受賞。
  • 宮本輝・・・1977年に『螢川』で第77回芥川賞受賞。
  • 村上龍・・・1976年に『限りなく透明に近いブルー』で第75回芥川賞受賞。カンブリア宮殿の司会も務められてます。
  • 山田詠美・・・1度芥川賞候補に選ばれる。1987年に直木賞を受賞。

 

選考会場と採点方法

選考会が行われる場所は、 東京・築地の料亭「新喜楽」の1階の座敷。(やっぱり良いところで選考するんだなー)

gekkan.bunshun.jp

 

司会は文藝春秋の編集長が務め、厳粛なムードの中で、委員のメンバーがお互いの意見をぶつけ合いながら、激論を交わし、各自が作品を、〇、△、×の3段階で評価し、その投票の結果で、受賞作を決定します。

 

それにしても、採点方法の〇は受賞させたい作品、△は普通、×は受賞にふさわしくない作品という意味らしいですが、こんな厳粛な場で、文化賞の審議のわりには、抽象的な記号を使うのが意外。「優・可・劣」とか「松・竹・梅」とかもっと場の空気に合うような表現でも良さそうですけど。

 

“絶対”がないものを評価すること

選考の審議は、かなり体力的にも精神的にもハードらしく、ベテラン作家それぞれの価値観がぶつかり合うので、受賞作でも満場一致で決まるものは少なく、今回受賞した又吉さんの『火花』や羽田圭介さんの『スクラップ・アンド・ビルド』に関しても、ラストの展開に賛否両論分かれたらしいです。

www.sankei.com

 

そもそも小説ってどうやって評価してるんでしょう。

というか、評価ってほんとにできるのかっていう疑問が若干浮かんできました。

 

例えば、サッカーやテニスであれば、「点数が高い方が勝ち」という客観的かつ明確な評価基準があります。ゴルフにしても、「スコアが低い人が勝ち」と、数字ではっきりと基準を表すことができます。

 

しかし、小説に関して言うと、そのような客観的かつ明確に評価できるものではないものです。算数なら確定した答えが出せますが、国語の答えにははっきりした正解がないのと同じだと思います。

 

もちろん、文体や文章構成、話の展開の仕方など、基本的な部分で優劣や差は生じると思います。ですが、多くの作品の中から厳選に厳選を重ねた芥川賞の候補に挙がる作品ってことは、そういう基本的な部分っていうのは、どの作品もほぼほぼクリアしてるのではないでしょうか。

 

そうなると、最終的に評価の基準になるのは、あくまで審査する人間の価値観、つまり“好み”なんじゃないかと思うんです。ベテランの作家さんでさえ、話の好き嫌いは人それぞれで、主観的なものだろうし。その中で客観的な判断をどれだけできるのかということには疑問があります。

さらに、選考委員の人数は9名で、審査員メンバーも変わることなくほぼ固定なので、そうなると、評価の基準が一定の方向に偏ってしまうような気もします。

 

“絶対的”な基準なないものに評価をつけるということは、非常に難しいことだと考えながら改めて思いました。

そういう“絶対的”な基準がなく、“相対的”なものであるから、人によって賛否両論が起こりますし、評価が高くても売れるかどうかは別問題ということも生じます。

 

ですが、そんな不明確なものだからこそ、ある一定の基準で評価をつけることに意義があるようにも思うんです。芥川賞創設者の菊池寛も芥川賞の評価の偏り(商業的・文藝春秋より)は認めているふしがありますし、現在も最初の厳選は文藝春秋の編集者の方々がされているので、“文藝春秋流”の作品の見方に偏ってしまうのも仕方ないと思います。

 

なので、有名な賞をとっている作品だから良い作品だとか賞をとってないから大したことないっていう単純な思考に陥らずに、その作品がどのように評価されているかという背景を理解し、自分の評価基準を持った上で判断していく、という認識が僕たち読書にとって大切なことなのかもしれません。

 

まとめ

今回は、芥川賞について調べてみました。

芥川賞ってこれまで聞いたことはありながらも、意外と選考の仕組みや賞そのものについて知らなかったので、今回は良い機会でした。

 

『火花』をまだ読んでない方は、本は完売してますが、電子版は販売してるのでkindleで読むのもありかも。

火花

火花

 

 

追伸

紀伊國屋書店で又吉さんのエッセイ付きブレンディボトルコーヒーが限定発売されたらしい。ブームにちゃっかり乗っかってますね。

www.kinokuniya.co.jp

 

芥川賞の謎を解く 全選評完全読破 (文春新書)

芥川賞の謎を解く 全選評完全読破 (文春新書)