(映画『鴨川ホルモー』より)
今回は大好きな万城目学小説で個人的にオススメしたい作品をご紹介したいと思います。
小説(本)だけ紹介しようと思ったんですけど、こんだけ映画化してて、しかも全部観てるなら、合わせて紹介したほうが良いなと思い、小説と実写版を感想をふまえてご紹介しまーす。
万城目学とは?
万城目学さんは、処女作の『鴨川ホルモー』が2006年に第4回ボイルドエッグズ新人賞を受賞し、衝撃的にデビューしました。
その後も出す作品がことごとく直木賞候補に挙がっています。なんと9作品中3作品が映画化、1作品がテレビドラマ化されるという、大人気作家です。
このように書くと、非常に順風に作家人生を歩んでおられるようですが、デビューするまでの道のりはとても過酷だったようで、作家になることを決意し、会社を退職したものの、全く芽が出ず、辛い期間が数年あったことを雑誌やエッセイで述べられています。
苦労人であり、一躍人気作家へ躍進された万城目さんの作風は、「万城目ワールド」と呼ばれ、独特の世界観、誰も思いつかないような奇想天外なストーリーが繰り広げられるファンタジー小説です。
僕も学生時代からとても好きな小説で、その世界観に圧倒されながら、楽しくて何度も読み返してました。
個人的におすすめしたい万城目学小説&映画ランキングまとめ
というわけで、これまで読んできた作品の中から、特にオススメしたい作品を僕の完全なる独断と偏見でランキング形式で感想と合わせて紹介したいと思います。
6位 プリンセス・トヨトミ
万城目学小説の「関西三部作」のうちの一つ。
「その日、大阪が全停止した」。このキャッチコピーが謎と広大なスペクタクルを感じさせます。
大阪城の地下に実は「大阪国」が存在している。そして、大阪の男たちはあるものを守るために、代々400年に渡って受け継がれ、守られてきたことがある。
そんなことは知らずに大阪へとやってきた会計検査院のメンバー。それぞれの思惑と誤解が重なりあった時、ついに全大阪人が立ち上がる。
「大阪国」とは何なのか、そしてタイトルから謎めいている「プリンセス・トヨトミ」、豊臣の姫とは一体何者なのか。
これまで大学や高校などの学校を舞台にしていた万城目ワールドが、会計検査という特殊業務のビジネスマン、そして大阪全体を舞台にして、スケールアップしています。
個人的にはこのスケール感やミステリー感も楽しく読めましたが、ただクライマックスの盛り上がりに欠ける部分があったり、少年の設定をなぜこんな複雑な設定にしたのかなどちょっと残念に思う部分もなきにしもあらず。
映画では、登場人物の設定が本とは異なる部分が幾つかあり、重要キャラの性別が変わっていたり、 重要と思われるシーンがカットされたり省略されたりしており、あまり評判は良くありませんが、この予告はめちゃくちゃカッコイイ。
「本の方が良いじゃん」と思ってしまうところがありますが、万城目ファンなら一度観てみるのも良いかと思います。
5位 ホルモー六景
全6編からなる『鴨川ホルモー』の続編小説。
ただ、単なる続編とは違い、『鴨川ホルモー』では語られなかった登場人物たちそれぞれの舞台裏が描かれています。
これを読めば、鴨川ホルモーでスルーしていた部分も「あぁ、なるほど、そういう経緯があったのか」と納得できます。それも無理やり後付けした感がないところがすごい。
各短編ごとに時系列も登場人物も異なるにもかかわらず、最終的には一つのストーリーとなっていることに気づかされ、そして「未来のホルモー」へと繋がっていく布石になっていることに驚かされる。
このようなところがさすが万城目作品だと思う。単なる続編でない、ファン心をくすぐる作品です。
ちなみに、映画版では『ホルモー六景』で登場する人物も描かれていたりするので、ホルモー読んだ後はマストで読むことをお勧めします。
4位 偉大なるしゅららぼん
滋賀の「琵琶湖」を舞台に繰り広げられるSFストーリー。
「湖の民」として不思議な力を与えられた二つの一族。代々にわたり争ってきた彼らの対決の最中、二つの一族の未来を大きく揺るがすことが起こった。
不思議な力の謎、そして憎み合っていた二つの一族の末裔同士が協力し、ついには「しゅららぼん」を起こす。
しかし毎回よくこんなわけわからないタイトルが思いつくなー。しかも何かカッコイイし。
そして、この作品も2014年に実写化され、映画公開されました。
設定が多数変わっている部分がありますが、大枠の流れは小説と同様です。
濱田岳が日出淡十郎役、岡田将生が日出涼介役を演じています。また、グレート清子のキャラは大幅に変更され、深田恭子が演じています。
時間や予算の都合もあるのでしょうが、涼介の恋物語や浩介のことは語られず、二度づけ禁止ルールについても詳しく述べられなかった点は残念だったりしますが、この小説をよく実写化したなと単純に楽しめます。
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ちなみに、しゅららぼんは『ジャンプ改』にて関口太郎氏により漫画化もしてます。
興味がある方はこちらもチェケラされてもいいかと思います。
3位 とっぴんぱらりの風太郎
万城目学初の歴史小説であり、「大阪の陣」を舞台にした時代小説。
主人公はさえない伊賀の忍び、風太郎(ぷうたろう)。名前の通り、忍びとしての任務を解かれた後にニートのようにプータローをして過ごしていたが、あることを皮切りに徐々に歴史を動かす裏舞台へと動き始める。
そして実は『プリンセス・トヨトミ』へとつながる伏せんの作品でもあります。
この作品でも万城目ワールドは健在で、コメディ要素もふんだんに盛り込まれ、笑いながら読んでいけます。
しかし、これまでの万城目学作品と違い、本当の"戦(いくさ)"で、戦いの最中、忍びという任務からも仲間が死んでいったり、自身も傷ついていきます。そういう戦の残酷さも描かれています。
そして、感動のクライマックス。万城目学の作品で笑って涙するのではなく、感動で泣きそうになります。何のために生きるのか、自分を犠牲にしてまで守りたいものとは何か、そんなことを考えさせられる名作です。
2位 鹿男あをによし
奈良を舞台にした奇想天外なファンタジー。
僕が万城目小説を初めて読んだのがこの物語です。
奈良の女子高へ赴任してきた教師(おれ)が、奈良公園で出会った人の言葉を話す不思議な鹿の命を受け、日本の危機を救うために"サンカク"と呼ばれるものを取り戻そうと奮闘するストーリー。
この小説は2008年にテレビドラマで放送されました。主役は玉木宏、堀田イト役を多部未華子、藤原道子役を綾瀬はるかが演じています。
濱田岳と綾瀬はるかは、万城目学の実写化作品には二度も出演しており、どちらもコミカルなキャラとして重要な役割を果たしていますね。
このテレビドラマはとても面白かった。コメディながら謎を解き明かしていくミステリー要素も含んでおり、小説とは違った意味でクオリティの高い作品に仕上がっていると思います。
エンディングテーマの曲もとてもカッコ良かった。
ちなみに、こちらも漫画版が出ています。
1位 鴨川ホルモー
そして僕が選ぶ第1位は、やっぱり『鴨川ホルモー』。
万城目氏の処女作であり、京都を舞台に京都の大学生が繰り広げる奇想天外なストーリー。そして、ファンタジーながら、自分の学生時代を思い出しながら、どこか懐かしく読める楽しい作品です。
二浪して京大へ入学した新入生の安部。彼は葵祭のバイト帰りに「京都大学青龍会」という超怪しいサークルへ勧誘され、バイトで知り合った同じ大学の高村と新歓コンパへ参加することになる。物語はそこからスタートする。
京都大学青龍会は、実はいにしえの時代から伝わる「ホルモー」という競技を行う一団であり、主人公たちはホルモーを別大学と戦いながら、青春時代を駆け抜けていく。
笑いあり、恋愛あり、大学生に戻りてぇー!と思わず思ってしまう最高の名作です。
また、万城目初の映画化された作品でもあります。映画は2009年に公開されました。
主役の安部を山田孝之が演じ、"凡ちゃん"こと楠木ふみを栗山千明、高村を濱田岳が演じています。
鬼語は小説版とは異なり、映画オリジナルのものになっています。
小説とは異なり、京都大学青龍会ブルースが楠木ふみの軍師のごとき活躍でトーナメントを勝ち抜いていく部分が描かれなかったことが残念ですが、それを差し引いても映画ならではのおもしろい作品になっていると思います。
また、鴨川ホルモーは同2009年に舞台化もされており、舞台版では安部役を映画版でライバルの芦屋役を務めた石田卓也が演じており、また早良京子役は映画版で早良京子を演じた芦名星が再び務めています。
万城目学作品の主人公の共通する特徴
(映画『鴨川ホルモー』より)
上記の物語の主人公たちは、学生だったり、教師だったり、忍者だったり、ビジネスマンだったりと、職業も年齢も設定が異なります。
しかし、万城目学作品には、ほとんどの主人公に共通している性格的な特徴があります。
それが、主人公が「劣等生」だということ。
もちろんホルモーに参加できたり、鹿と話せたり、湖の民として特殊な力を持っている人物ではありますが、どこか頼りなく、その一員としてはできの悪い方として位置付けられてしまうようなキャラクターです。
よくある主人公像は、登場する人物の中でも特に優れた能力を持ち、その能力でどんどん道を切り開いていくっていう感じですが、万城目学が描く主人公は、パッとしないどこにでもいそうな人物です。
そして、その主人公の友人や周りに、もっと優れた力を持つ人物がいて、主人公はちょっとキョドリながらも、その人物たちと協力したり、張り合いながら物語が進んでいきます。
でも、そんな主人公だからこそ、より一層自分と主人公を重ね合わせることができ、物語の世界に没頭することができる。
頼りない自分が、少しずつ成長し、能力がある優秀なライバルたちに引けを取らない力を発揮していける。そんな勇気やモチベーションを高められる作品だからこそ、万城目ワールドに人は惹きつけられるのかもしれないなと思います。
個人的におすすめな万城目学エッセイ
万城目学の作品は奇想天外な小説が代表的ですが、ちょこちょこ出してるエッセイも実はおすすめです。
エッセイも色々出てますが、僕のおすすめとしてはやはりエッセイ一作目の『ザ・万歩計』ですね。
万城目氏の半生が綴られ、どのようにして小説家になったか、鴨川ホルモーが生まれた経緯など、ファンとしてはとても知りたい裏話も語られています。
小説作品のように、奇想天外でめちゃくちゃ笑えるっていうものではなく、ほのぼのと読んでいく内容です。なので、人によっては物足りなさを感じる方もいるかもしれませんが、これはこれで味のある文章で面白いです。
万城目ワールドが大好きな方は、一読されても良いかと思います。
実は読んでいないので読みたい作品
今回は『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』や『悟浄出立』 については書きませんでしたが、かのこちゃんも動物好きにはたまらない涙なしでは読めないストーリーでおすすめです。タイトルからはイメージしにくいですが、実はSFチック、ファンタジックな内容です。 『悟浄出立』は短編集です。
2016年3月に新たに出版された『バベル九朔』は実はまだ読めていません。
早く読みたいと思いながらも、あらすじとか口コミを見てるとどうなのかと思い、まだ手がつけれていませんでした。でも、やっぱり万城目ファンとして、自分自身で読んで確かめることが大切ですね。ってことで読みます。
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